2020.08.05
第2章1HIS hair clinic japan に向けて
帰国後にやるべき事は主に2つあった。①HIS hair clinic での来年の技術研修に行かせるスタッフの発掘、選定。②HIS hair clinicとのフランチャイズ契約の内容の詮索や詰め。その他研修についての連絡などをHISとやり取りしてくれるビジネスパートナーの確保。②については以前の職場関係で英語が達者で事業の立ち上げや契約等の業務にも精通している女性の適任者をリストアップしていたので会って説明し、テンポラリーワーカー(臨時雇い)で承諾を得た。
リクルーティング
問題は①の施術研修を受けてもらうスタッフだった。まずはアートメイクに従事している施術者にターゲットを絞った。職種的には1番近いと思っていたからだ。当時は今程当局の規制も厳しく無く、知人の紹介だけでなくwebで検索すればいくらでもアートメイク師は見つかった。自身の頭を見せ、この施術の事を説明すると一様にその出来栄えに驚き、興味を持ってくれた。中には商機に目ざとく、既に自身でノウハウを模索し、薄毛のお客様の頭皮にも対応していると自信満々に言って来たアートメイク師も居て、これは!と思い、試しに私の頭皮の小さなエリアに打たせたら酷い目に合った。ドットは馬鹿デカく、色も真っ黒(その後濃い青に変色した)。翌年、HISのイアンに「Oh my God!!」と怒られながらリムーバーなどである程度は除去してもらったが9年経った今でも私の頭皮にはその勘違いアートメイク師の痕跡が下の写真のように少し残ったままだ。
イギリスに行き、当時の日本には無い技術を学べて自身のスキルアップが図れる。おまけに経費は全てこちら持ちだ。多くのアートメイク師は是非にと積極的だった。しかし上の勘違いアートメイク師がそうであった様にみんな一様に自信満々で、要は自身が行なっている施術と似た様なものであり、ある程度の研修を受ければ習得出来ると高を括っているところが引っ掛かった。確かに、私もそう言う理由もあったからこそアートメイク師に絞ってリクルーティングを始めたのだが孟子の似て非なりという言葉の通り、果たして本当にそうなのかという思いも有った。(今の私ならやはり似て非なりと断言する)
ネットで見つけたHIS hair clinicに賭けて身を捨ててイギリスに行くような私だがその反面仕事に於いては悲観主義、良いように言えば前向きのネガティブ思考なところも有り、石橋も叩いても渡らない様な対極の性分も持ち合わせている。口々に「これ、日本で始めたら流行りますよ。覚えるのもそんなに難しく無いと思うし」と楽観的に言われると逆に不安を覚えた。「いや、これは似て非なるものかも知れないし、まずは行ってからで無いと分かりませんね。でも面白そうだしチャレンジさせて下さい。」こんなニュアンスで返答して来た人は皆無だった。これからHIS hair clinic japanを興しビジネスパートナーとして共に歩み、私の頭もメンテしてもらい続け無ければならない、そういう相手としては何か物足りなさを感じずにはいられなかった。これはと思える人に出会う事も叶わず師走を目の前に控えていた。
余談
勘違いアートメイク師に私が酷い目にあったと記したが、似た様な、もっと酷い気の毒な外人のお客様が5年ほど前にSOSで来られた。都内のアートメイクサロンで受けたらしい。前述した通り、本来我々の施術と眉へのアートメイクは似て非なる施術なんだが、なまじ道具や針、インクが手元に有り、針を打ち色を入れるという行為に対してもそこそこ腕に覚えがあるから安易な気持ちで足を踏み入れ酷い結果になる。私もあのまま続けさせていたら同じ様な有り様にされていただろう。
当時のリクルーティング活動時にもしこのアートメイク師に出会い、話を聞いてたら「私は薄毛への施術も出来ますよ」と自信満々に言ってたに違いない(笑)
本当はレーザーで消してからドットを入れ直すのがベストだが出来得る限りで良いと言われて修正した。多少はマシにはなったと思うが青いインクが目立つのはどうしようもない。アートメイクのインクは押し並べて経年後は青に変色する。私の場合も然りだった。
PS:今回の記事内では某アートメイク師について述べたが、アートメイク師全ての方々を包括して言っている訳では勿論無い。物事を楽観的に考え、虚勢を張り、安易に手を出したりするのは個々の性格に依るものだろう。
悩みやコンプレックスを抱え、藁にもすがる思いで救いを求めて来たであろうお客様に対し、絶対的な自信と経験を持ち合わせていないにも拘らず安易に施術を引き受けた上記写真のアートメイクサロンの様な業者は如何なものかと思わざるを得ない。他にも同様の業者での失敗例も数多く見てきたし出来る限りの修正もしてきた。私の頭の一部を試しにやらせたアートメイク師もそうだが、そういう人達の意味が分からない自信はどこから来ているのだろうかと思う。ビジネスの為の大風呂敷、虚栄なのか単なるアホなのか。いずれにしても恐らく私とは思考回路が別の生き物なんだと思っている。
私自身も海外で眉の施術の研修を受けた経験が有るが、シェイプの造作や色の選定の難しさや施術の繊細さはまた我々のそれとは似て非なる物だと重々理解している。道具や針も同じようには揃っているし、たまにお客様から眉も可能ならお願いしたいと言われるがまだまだ経験不足の身では怖くて実際の施術は出来ない。機会が有ればクリニックのスタッフにもきちんとした研修を受けさせ眉とかにもチャレンジさせたいと思っている。