2020.10.28
第4章1身を捨ててこそ①
No pain、no gainという英語のことわざが有るが何かを得る為には痛みや苦労を伴うものだという事だ。この施術に於いても頭皮を針で打たれる訳だから気持ちが良いとは決して言えない。しかし私にしたら2〜3時間の痛みを2〜3回我慢すれば長年悩んできた忌々しい薄毛の呪縛から解放される事を思えばそんなに大きな負担では無いと思うのだがどうだろう。加えてクリニックでは麻酔もあるのでどうしてもという方はリクエストすれば良い。
この施術を身につけ、どこの傘下にも属する事の無い独自の体制を築くまでの経緯を前文まで記してきたが自分でもよくあれだけ体を張って行動し、時間とお金も費やしてきたなと思う。還暦過ぎた今ではとてもじゃ無いがあれほどの気力はもう持ち合わせてはいないのだが元々の性分がそうさせたのか若い頃からやりたい事、欲しいものは何が何でも手に入れないと治まらない性分だった。その癖一旦手中にしてしまうと急速に興味が失せてしまうというどうしようもない飽き性の部分も兼ね備えていたから余計にタチが悪い。その原因はほぼ自身でも分かっている。何かが欲しい、やりたいと思った瞬間がゲームのスタートで手中にした時がゲームのエンディングだ。全部を理解したその後は殆ど想像の範囲でしか物事が起こらないから急速にやる気が失せ、たとえゲームを続けたところでそれは単なる作業と化し、あれほどあった情熱も時間と共に覚めて行く。今までの人生での仕事や女性に対しても殆どそうだった。だからこの先ビジネスで何か起業し、運良く成功しようがその結末は見えているし、結婚も一度した事は有るがもうしようとも思わない。寂しくも有るが自分は結婚どころか恋愛に於いても不適合者だと自覚している。これまで付き合った何人かの女性からも「あなたはどんなに成功しようが、何を得ても決して満ち足りる事が出来ない人なんだわ」とよく欠陥人間扱いもされた。今は歳も取ってそうでも無いんだが若かりし頃はその通りだったかも知れない。
恐らく身を捨てて何かを得ようとしてる時が結局1番楽しいのだ。9月9日の記事にも書いたが、「遠く日本から離れたこのバーミンガム郊外の住宅街を日夜トボトボ歩いているという現実が私に何とも言えない不思議な感覚を抱かせていた。病葉の様に水脈に身を委ねてくねくねと独り流されて行く自由感、またそこから派生するある意味心地の良い孤独感とでも言おうか、とにかく今思い起こしても甘美で楽しい時間だった。」このゲームの途中、まだ先の見えない状況の中でエンディングに向けて独りでプレイしているその時が1番楽しい甘美な時間で有り、本能が求める自身の姿なのかも知れない。ある意味マゾ的な部分も有るかも知れないが分かって頂ける人も少数ながらおられるのではないか。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
捨て身の覚悟で取り組めば、危機を脱し活路を見出せるということで、溺れかけたときはもがけばもがく程深みにはまるものであり、捨て身になって流れに身を任せれば、やがて浅瀬に立つことができるという意味なのだが私の最も好きな座右の銘の一つだ。また危機を脱する時のみならず人生に於いて本当に大切な、大きな意味のある何かを得ようとするならば同じく身を捨てて対峙し、精進しなくてはならない場面も多々あると思う。その時にそれが出来る出来ないでその人の人生の分岐点となるのでは無いか。私は独り身の自由人で有るが故に片道切符で単身イギリスに乗り込んで修行するという捨て身で臨めた訳だがそれでも普通の勤め人や家庭持ちの人々も普段の仕事や生活の中でもこの精神と姿勢で窮地に臨んだ方が良い結果となりうる局面も有るだろう。「死中に活を求める」「肉を切らせて骨を断つ」「虎穴に入らずんば虎子を得ず」他にも似たような言い回しはあるが身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれが私には1番しっくりくる。
捨て身と言えば最近物凄い捨て身の男を知る機会があった。半沢直樹だ(笑)一流銀行に勤めておきながら自身の信念の為には左遷、退職も厭わず常務だろうが頭取だろうが平気で噛みつく。絶対絶命の状況下でも流れに身を任せる事なく戦い、相手を打破していくのだが彼の場合はどちらかと言えば「死中に活を求める」だろう。自身に危険が及ぶ状況から生き延び、勝利を収めるという意味では「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」と似た意味があるが「死中」はすでに絶望的な状況が広がっているのに対し、「身を捨ててこそ」は能動的にあえて捨て身の覚悟で臨むという部分が違う。半沢直樹のように行動していたら精神的にも体力的にも持たない(笑)何処かで流れに身を任せる方が私には合ってるかも知れない。これほど高視聴率で支持されるという事は脚本やキャスティングの面白さは勿論の事だが人々が普段したくても中々出来ないであろう捨て身の姿勢、その潔さを半沢氏が視聴者自身の潜在的願望の具現者として演じたからに他ならないのではないか。