2020.07.01
第1章5SPJの技術の裏付け
技術と理論で施術する
このヘアータトゥーのノウハウを習得してから9年になる。使う針の種類が増えたくらいでマシンや機材、インクは同じままだ。高性能な物も数多く出てきているが基本的な動作さえしてくれれば事足りる。この施術に於いては技術と理論が全てだからだ。手前味噌になるが幸いにも多数のお客様の頭皮や薄毛、傷痕を施術する機会に恵まれたおかげで経験値を重ね、技術的に向上し続けられてきたと思う。
施術の理論も然りだ。お客様によって頭皮の性質や薄毛のタイプ、傷痕のタイプは異なる。私はそれを見て触れて針の種類、インクの濃さ、入れるドットの深さや大きさ、施術の手順、など施術の御膳立てを考える=要は仮説を立てるという事だ。その仮説の通りに施術を進める中で、もし仮説から逸れた場合は状況に応じて対応していく。そして経験を重ねる内に(=検証していく内に)仮説がそのまま良い出来栄えの結果に繋がって行くケースが増えてくる。ここまで来るとある程度の法則性を見出だす事が出来る。それに拠って薄毛や傷痕、頭皮のタイプをいくつかにグループ分けをし、それぞれに対する施術のノウハウも統一化できるようになる。つまり仮説だったものが信憑性を得て1つの理論に成るという事だ。だからと言ってその理論を杓子定規に進めるわけでも無い。どんな場合でも100%ぴったり当て嵌まる事は稀だ。要は薄毛や傷痕、頭皮のタイプ別の施術の原理原則さえ把握しておけば後は個々の頭皮の状態に技術力で対応すれば良いだけの話だ。経験を基にしたこういう信憑性のある理論の裏付けがあってこそ技術力が生かされるのだ。理論が無いと場当たり的な施術になるから良い結果は望めない。
下は私がHIS hair clinicで研修を受けていた際に与えられたマニュアルだ。数百ページにヘアータトゥーについてのノウハウが集約されている。ただ国が違えば人種も違うし考え方も異なる部分も出てくる。また人種が違うと頭皮の性質も違ってくる。私はHIS hair clinic で学んできた事、私自身で実際の施術を受けて分かった事、そして10年間の施術経験、それらをベースに日本人向けの「ヘアータトゥーの施術の基本的なメソッド」なるものをオリジナルで組み立てた。また、そこに外国人が持ち合わせていない日本人の繊細さ、美学、細部にこだわる完璧主義のテイストを注入してまとめ上げた。このメソッドの事も話せる範囲で色々書いていくつもりだ。下でガンの取り扱いに触れよう。
日本人はこの施術に向いている
このガン捌き=扱い方もイギリスでの研修をベースにし、その後の多数の経験を基にその理論に辿り着いたヘアータトゥーの施術の基本的なメソッドの1つだ。先端に針の付いたガンというハンドピースの機器で頭皮にインクを注入していくわけだが、ただ針を刺して行けばいいというものではない。4話でも話したが刺されるとやはり痛みは増幅する。ガンを握ったそれぞれの指をどういう風に動かして針を頭皮とコンタクトさせるか。仕事をするのはあくまで針であってガンとそれを持つ指や手は針が良い仕事をしてくれる様にリードする役割。深く浅く大きく小さく、もっと小さく。自由自在に思い通りの擬似毛根なるドットを醸し出せるようにガンを操り針が応える。ガンを持つ手のひらの下の部分、拇指球と小指球と言うがここも役割を担ってるし、もう片方の手も遊ばせている訳では無い。両手の全ての部分にそれぞれの役割が有るのだ。
ガンの持ち方や動かし方はゴルフで例えるとクラブの握り、構え、スウィングだ。それらの基本がなってないとボールを上手く打てないのと同じで良いドットは打てない。自己流だといつまで経っても一流にはなれない。ゴルフにスウィング理論があるのと同様、ガンにも打ち方の理論があるのだ。
海外に講師として招かれて何回か施術を教えに行った事がある。その時に箸と豆を持参し、受講者に豆を1つ1つ箸で摘み別の皿に移していく動作をさせてみる。まぁ驚くほど日本人に比べて下手だが文化が違うから仕方がない。ガンの持ち方と箸のそれは共通している部分が有る。もうここで外国人と入り口が違う。日本人には上手くガンを扱える素養が日常から備わってるのだ。後は何事もそうだがセンスも大事。センスの有る日本人がガンの扱い方の理論を学び、鍛錬すれば(今度は)野球で例えてみるが、プロ野球の一軍ベンチに何とか入れるレベルまでは行けるだろう。その人間が大リーガーを目指すなら更に色々な施術のメソッドを理解し、経験を積む必要が有る。