2020.07.08
第1章6皮膚に添った施術のメソッド
今回は「施術後の経過時の安心感」に資する話。内容は皮膚の仕組みと施術の進め方についてだ。お客様に於いてはある程度理解しておかれると施術を受けられた後に「なるほどな」と合点がいく場合が有るかも知れない。つまり余計な心配や不安を抱えずに済む。
さて、人の頭皮にインクを入れていく訳だから当然、皮膚の仕組み、ダメージからの回復、インクの性質などにも主眼を置かねばならない。それらを理解し、添った形で施術に臨むのが正しいと言えよう。知識や理論を前提にした施術で無いと結果にコミット出来ない。
皮膚の仕組みとドット
皮膚のターンオーバー。肌の新陳代謝、生まれ変わりの事。肌は「表皮」「真皮」「皮下組織」から成りターンオーバーは上図の表皮で行われる。表皮も4層から成っていて1番皮膚に近いところが角質層。頭皮も皮膚だからこのターンオーバーが行われ、表皮に入れるインク(ドット)もターンオーバーの影響を少なからず受けるという事だ。表皮の最下部(基底層)で新しい細胞が出来、形を変えながら上の方に上がって行き最後は角質や垢となって一定期間で排出というか、剥がれ落ちる。
施術で入れたばかりのドットはしばらくは表皮の比較的上のほうに有るので色も濃く形や輪郭も鮮明だ。しかし、ターンオーバーによって新たな表皮が覆い被さってダルマ落としの要領で下がった分、ドットの濃さ、形や輪郭の鮮明さは(個人差にもよるが)幾分失われる。反面、ドットの上に新しい表皮が覆って来るのでドットはある意味守られる事になる。要は打たれたばかりのドットは本来の濃さ、形ではなくターンオーバーによって本当の意味で皮膚に定着し、本来の色、形、輪郭を醸し出すと言う事だ。周期は約28〜56日。28日というのは20代。30代〜40代は45日(1ヶ月半)はかかるらしい。
色落ちとそれを前提とした施術
人間で有る以上新陳代謝が働く。上で述べたターンオーバーがその1つ。2つ目は発汗や針による傷を修復させようとする細胞活動。これらに因ってもある程度の色落ちは起きる。またインク自体も水溶性なので施術直後のシャワーなどに対してもやはり色落ちの原因となる。故に個人差は有るが施術の経過中である程度の色落ちは避けては通れない現象なのだ。要はこれらを前提にした施術のメソッドを組み立てる必要が有ると言う事だ。
通常は2〜3回の施術で完成だが3回のケースで説明する。完成時のドットの密度と濃さをレベル⑩と設定する。以下の各数値は私の経験値からだが新陳代謝等に個人差があるのでレベルに多少の上下は生じる。お客様には施術の進め方だけを理解して頂ければ良いと思う。
①回目 頭皮とのファーストコンタクトなのでインクの定着や色の適正度を測る為に薄めのインクやスペーシー(ドットの間隔が広い)に全体をカバー。レベル⑦
②回目 前回から7日〜14日の日数を空ける。その間に頭皮はダメージから回復し、定着したドットも出てきているが発汗やシャワーで多少は色落ちが発生しているのでレベル⑤〜⑥まで下がっている。初回より濃いインクを使い、色落ち箇所のドットにピンポイントで新たにカバーする。更に初回に間隔を空けて入れたドットの隙間もカバーする。暫定レベル⑩に到達。
③回目 同じく7〜14日空ける。早い人はターンオーバーが起きてるだろう。色落ちで暫定レベル⑩がレベル⑧〜⑨まで下がっているので同じ作業でレベル⑪〜⑫にアップで完了。そこからターンオーバーや発汗で多少色落ちしたとしてもレベル⑩になる。この時点で多くのドット自体も2〜3回カバーされているので色落ちしずらい状態になっているのでレベル⑩のまま維持されて行く。
ちなみに上記は薄毛が全体的に割と進行している人のケースだ。HP上の薄毛タイプで言えばタイプ4〜5以上だ。タイプ1〜3の人などは2回で完成させるので初回から暫定レベル10まで持っていく場合が多い。個人の頭皮の状態、毛髪の残存度などそれぞれの状況によって施術のメソッドは常に変えていく。
施術の間隔についてだが、HIS hair clinicのマニュアルでは通常7日間、最短で5日間と記してあったがSPJではそれよりも長い間隔、7〜14日を空けるようにしている。1か月でも構わない。皮膚を完全に回復させられるし、色落ちするドットを見極める為にも少し長めの期間放置した方が良いからだ。
色落ち前提の施術メソッドをまとめると、日数の間隔を空けて皮膚の回復を待ち、新陳代謝等に因るドットの色落ちをポジティブに受け入れ、それらをより濃く再生させるリカバー作業に加え、隙間の空白箇所に新たなドットを増やしながら濃淡を醸し出して行くという工程(=これがまた細部の美学にこだわった繊細な作業なのだが)を繰り返していく足し算方式がベースだ。また、ターンオーバーによって新しい皮膚に覆われたドットは消えにくいものに変質する。少し色合いは浅くなるがここでその周りに濃いドットを造ってやると色合いに濃淡が生まれ、立体感が出てより自然な見栄えになる。極論を言えばターンオーバーはドットの定着と自然な見栄えに必要な濃淡さを造り出す為にも必要な人体のメカニズムと言っても過言では無いというのが私の考えだ。
皮膚の仕組みに添った施術の理論とメソッド
細部にこだわる完璧主義で足し算方式の作業を遂行出来る技術力
結果にコミットするならこの2点が大事だ。